文芸書・人文書・人文学とは
文芸書の定義とは
よく本屋やテレビなどで「文芸書」という言葉を見ることがあるのではないでしょうか。
文芸書のランキングのコーナーをさらっと斜め読みしたり、おすすめの文芸書のサイトを参考にしたり、ネットで「文芸書」と検索すると最初に出てくるページも、文芸書の人気ランキングです。
本と言ったら文芸書というくらい、ありふれた言葉です。
しかし、そもそも「文芸書」とは、一体どういう意味なのでしょうか。
文芸書の定義について考えてみると、意外とピンとこない人も多いかもしれません。
文芸書とは、実は定義がとても曖昧な言葉で、ざっくりと「文学作品全般」を意味します。
ある辞書では、「文芸書」に関し、「言語によって表現された芸術の総称」と記載があります。
言語によって表現された芸術の総称、すなわち「文学作品全般」となりますが、こうした広い意味を持った言葉なので、小説、詩や短歌集、エッセイ、戯曲集などの他に、ドキュメンタリーやビジネス書も、小説っぽい雰囲気があれば、それは「文芸書」に含まれることもあり、あくまで定義は曖昧となっています。
試しに、あるサイトの書店員がおすすめする「文芸書」の一部を見てみましょう(参照 : 迷ったらこれ!書店員おすすめ文芸書♪)。
新海誠『小説 君の名は。』
石原慎太郎『天才』
村田沙耶香『コンビニ人間』
このように、おすすめの文芸書も、「小説」のようなジャンルの本が占めています。また、KADOKAWAの文芸書のカテゴリーを見ても、「小説」がずらっと並んでいます(参照 : KADOKAWA 文芸書の新刊一覧)。
以上のように、「文芸書」とは、文字を使った芸術作品全般を意味するジャンルということができるでしょう。
人文書の定義とは
もう一つ、「文芸書」と似たような言葉で、「人文書」というジャンルも本屋などで見かけることがあると思います。
読み方は「じんぶんしょ」です。
まだ「文芸書」はさらっと入れるコーナーですが、「人文書」となると、少しハードルが高く、本屋でも奥地に存在するコーナーといったイメージがあるかもしれません。
それでは、人文書とは、どういったジャンルなのでしょうか。
文芸書よりも、人文書のほうが、もうちょっと定義がはっきりしています。
先ほど、「文芸書」とは、「文字を使った芸術作品全般」、ざっくり言えば「文学作品」と言いましたが、一方、「人文書」とは、主に文芸分野の学問に関する専門書と言えるでしょう。
具体的には、「哲学・思想」「宗教」「心理」「教育」「社会」「歴史」という六つの大きなジャンルに属する本が、「人文書」とされます。
たとえば、ロラン・バルトやフロイトの本は、ものごとを客観的に見て、分析する学問書であり、「人文書」です。
また、紀伊国屋の人文書のランキングでも、人文書の定義を次のように定めています。
当企画における「人文書」とは、「哲学・思想、心理、宗教、歴史、社会、教育学、批評・評論」のジャンルに該当する書籍(文庫・新書も可)としております。
この人文書と関連した用語に、「人文学」という言葉があり、人文学を学ぶ大学の学部を指す場合には、「人文学部」といった使い方もされています。
人文学とは、以下のような意味となります。
人文学は,広義には人類の文化的資料の生産・保存・解釈に関する学問の総称であり,狭義には自然科学や社会科学に対して,哲学・文学・歴史・宗教・言語・芸術などに関する諸学問を指す。ほぼ同義の表現として人文科学(human sciences),精神科学(moral science; Geisteswissenschaften)がある。
もう少し分かりやすく簡単に言えば、人文学とは、「人間とは何か」という人間学である、と解説する大学もあります。
人文学とは何か、ひとことで言えば「人間学」です。英語ではズバリ”the humanities”、つまり「人間性についての学問」となります。文学、言語学、哲学、宗教学、歴史学、美学などさまざまな分野に分かれていますが、その根本には「人間とは何か」、「人間性とはどういうものか」という共通の問いかけがあります。
最後に、「文芸書」と「人文書」の違いについて簡単にまとめると、文芸書が、小説や詩といった広く文学作品全般を指すのに対し、人文書は、先の六つのジャンルに関する学問書と言えるでしょう。
以上、文芸書、人文書の意味でした。