Contents
カラスは食べることができるか
都心では、特に厄介者のイメージが強いカラスという鳥。ゴミ置き場に集まったり、朝からうるさかったり、また漆黒で見た目もちょっと怖いことから、カラスのことが嫌いだったり苦手だとという人も少なくないかもしれません。
しかし、カラスと言っても鳥の一種。普段、鶏肉や卵は日常の食卓に上がりますし、もしかしてカラスも食べることができるのだろうか、という疑問から調べてみると、どうやら、海外でも、また日本国内でも、カラスを食べる風習はあるようです。
まず、海外の事例では、ヨーロッパのフランスで、カラスは高級食材として料理に使用されるとのこと。
野生動物を使った獣肉料理である「ジビエ」に、カラスも仲間入りしているそうで、信州のフレンチレストラン「エスポワール」のシェフ藤木さんは、次のように言います。
カラスの調理を考えだしたのは7年前。ジビエ料理について書かれたフランスの古い本に『カラス肉は大変に美味である』という記述を見つけて。
そんなに美味しいならぜひ挑戦したいと思い、地元の猟師さんからカラスを仕入れたんです。1年前からお出しするようになり、今では1日に5〜6組のお客様からご注文があります。
意外にも、カラスの肉は美味しいとのこと。別の記事でも、砂肝を柔らかくしたような食感で、生臭さもなく、鉄分が豊富という風に紹介されています。
肉質は筋肉質で歯ごたえがあり、砂肝を少し柔らかくしたようなザクザクとした食感が楽しめる。生臭さは全くなく、カモよりも赤身で濃厚な味わい。低脂肪高タンパクで鉄分が多いため、貧血気味の女性などにおすすめの食材と言える。
海外だけでなく、日本でもカラスを食べる文化はあったようで、長野県上田市では、「カラス田楽」という料理が、信濃国分寺の八日堂縁日で、江戸時代から昭和30年代くらいまでは食べられたそうです。
カラス田楽は、カラスの肉をミンチにし、おからや刻みネギと混ぜ、きりたんぽのように串につけ、焼き上げるもので、ろうそくの形に似ていることに由来し、別名「ろうそく焼き」と言います。
このカラス田楽をつまみに酒を飲むそうで、実際に食べた方の感想によれば、皆さん美味しいと言っているそうです。
上田地方には「カラス田楽」という郷土料理が伝わっています。その名の通り、カラスの肉を骨ごとたたいてミンチにし、おからや刻みネギなどと混ぜ、きりたんぽのように串に付けて焼いたもの。
形状から「ろうそく焼き」とも呼ばれ、冬の気候が厳しい同地方でカラス肉は「体が温まる」と重宝され、昭和の半ばまで縁日などでも売られていそうです。
その他、茨城県の一部でも、戦後、カラスを食べたという経緯があり、しかも刺身で食べるとのこと。
茨城県の一部地域では、太平洋戦争終了後、カラスの胸肉を生食(刺身)してきた経緯があり、現在でも続いておりいます。ジビエ肉として特産品にする声も上がっています。
ただ、この茨城でのカラスを刺身で食べるという話は、信憑性がどこまであるか、疑問を指摘する声もあります。茨城県の極一部で食べるというもので、風習や文化と言えるほどではないという話もあります。
カラス肉の安全性
カラスは、不吉なイメージとともに、都会だと特にゴミ漁りの印象もあるので、不潔な印象も加わり、抵抗がある人も多いのではないでしょうか。
カラスの肉を、仮にプロの専門家が調理して食べるにしても、やはり食用となると安全性が気になります。
カラスの安全性については、実際に調査したところ、「まったく問題ない」とのこと。
帯広畜産大学の調査によると、微生物検査・農薬検査ともにカラス肉の食用はまったく問題ないという。
これまでの研究では、まずはじめにカラスの肉の安全性を調べました。その結果、ほんの一部の個体から有害物質が検出されたのですが、食べても問題ない程度の量でした。一方、栄養面では、鉄分やタウリンが多いうえに、高タンパク低脂肪、低コレステロールという素晴らしい食材です。
安全性や栄養価は、そのカラスの普段の餌や環境によっても違い、都心と田舎でもだいぶ異なって一概には言えないかもしれませんが、意外にも安全性は問題なく、栄養価も高いようです。
とは言え、個人的にはあまり食欲はそそられませんが、カラスの鳥害なども踏まえると、カラス肉のジビエも、今後、もう少し普及するようになることもあるのかもしれません。