
ウィーンが世界遺産の登録抹消か
貴重な文化財や自然環境を人類全体で守っていこうということを目的にユネスコが指定する「世界遺産」。
万里の長城やシドニーのオペラハウス、日本の奈良の大仏など、現在、世界中で世界遺産は1000件以上に上っています。
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その世界遺産の一つであるオーストリアの首都ウィーンが、今世界遺産の登録が抹消になるかもしれない「危機遺産」に指定されていると言います。
一体なぜでしょうか。
ウィーンの世界遺産登録抹消に関する理由について解説する前に、まずウィーンについて紹介したいと思います。
ウィーンの歴史と街並み
ウィーンは、オーストリアの東部にある首都で、ドナウ河の両岸に位置し、広大な森もあります。
ウィーンが発展する契機となったのは、1278年、スイスの地方貴族だったハプスブルク家がウィーンに本拠地を移したことでした。
中世から近代にかけて中欧文化の集積地として様々な文化の入り混じった豊かな世界が育まれ、オペラ座やウィーン市庁舎など豪奢な建物も次々と建てられていくなど、美しいウィーンの街並みがつくられていきました。


こうした歴史と文化と自然とが調和したウィーンは、2001年に街の中心部全体が「世界遺産」に認定されることになり、世界遺産に認定された地区は、建物の高さ規制などによって景観が保護されてきたのでした。
ところが、この世界遺産の登録抹消まで生じるかもしれない、ある問題が起こったのです。
それが、ウィーンの新しい都市計画でした。
ウィーンの「世界遺産」登録抹消危機の理由は「都市計画」
ウィーンは、街の再開発の一環として、この世界遺産に登録されている区域内に、高さ73メートルの高層ビルを建設する方向で動き出したのです。
当然、ユネスコ側は、世界の遺産であるウィーンにそのような景観を大きく損なう建物を建てないように働きかけ、「危機遺産」に指定しました。
ところが、この指定に、ウィーン側は、世界遺産登録が抹消されたら、残念だが仕方がない、という風に答えています。
ユネスコ オーストリア モナ・マイリッチ氏「国際社会に警鐘を鳴らすため、危機遺産に登録しました。ウィーンの世界的・普遍的な価値が失われないためにもです。」
ウィーン市 都市計画担当 ルドルフ・ツンケ氏「抹消されたら残念だが、街の価値が変わるわけでもない。世界遺産から抹消されても、ウィーンは世界の中でも美しい街の1つであり続ける。」
なぜそうまでしてウィーンは高層ビルの建設にこだわるのでしょうか。
その理由として、少子高齢化で社会保障費が足りないこと。またイギリスのEU離脱で企業がロンドンから出ていく今こそウィーンに誘致するチャンスであり、そのためにビルを建設すべきだという声もあると言います。
一度世界遺産登録をされると、ユネスコの言いなりにならざるをえず、そのぶん観光客が増えるかと言うとそれほど大きなメリットもないという声もあります。
ウィーンの街の人々も、そもそも「世界遺産」というものについてそれほど興味を持っていないようで、やはり抹消されたらされたで仕方ない、といったような考え方を持っているひとも少なくないようです。